充分に進んだ魔法は科学と区別がつかない

ジョン平とぼくと (GA文庫)

ジョン平とぼくと (GA文庫)

 この歳(私は33)になってジョブナイル、しかも学校物(高校生)の小説を読むのはなんとなくこそばゆいと言うか、実際読んでて主人公のもどかしさに背中がむずむずするのだが。まあ、これはおっさんが自分の若い頃の「ダメさ加減」をこの小説に思い出さされて一人で痒がっているだけなので置いておくとして。

 舞台は魔法と使い魔が存在する現代と言う設定。魔法に対する態度もどちらかと言えば科学的で日向に溜まったエネルギーを特定のキーワードを用いて意図した物理現象に変換すると言った物。決して「わけのわからない物」としては扱われない。
 そうだよな、人間に探究心がある限り魔法を「わけのわからない物」のまま留めて置く様な真似はしない。身近に有ればあるほどそれは研究の対象になるだろうし、研究で有る限り再現性が重視される、実験に対する他者や自分の魔法に対する影響を避ける方法も考慮されるのは当然だろう。

 そういった意味ではこの物語はどちらかと言えばSFに近い印象を受ける。魔法に対して解っている事、解らない事をきちんと区別してから主人公を通して読者に説明している、それはどちらかと言えばSF小説の流儀だ。
 SFが苦手な人が読んでいると困るので一応申し添えておくと余り気にしなくていい。邦訳SFの様にくどくどしい説明や文*1は無いし、「ぼく」が語る地の文がどんどん物語の先に導いてくれる。
 この物語は使い魔ジョン平と重のゆるい日常とその周りに起こった事件とそして少しばかりの成長を楽しむものなのだ。なにせ魔法を発動するキーワードが「ランドセル。かえで。ろうそく。ぶどう酒。くじらっ」なのだ。うわ、ゆるっ。

 2006/10/28追記:WEBに読みきりが公開されていました、興味のある方は下記より。
 GA文庫 ジョン平とぼくと

*1:と思える部分が実はSF好きにはたまらんかったりするのだが、それにファンタジーだって物語世界の構築をまじめにやっている小説は似たようなもんだし、折れた魔剣 ISBN:4150101469公子 ISBN:4150200459