この記事を書いた理由
今年の目標として、はてなブックマークばっかりじゃダメで一月一回ぐらいはブログも書かないとなと、思っていたところちょうど良いお題だったから。もう今年も一月が終わりそうだし。
また、id:fnm氏のブックマークコメント『「デザインだと思うよ」とかいうお気持ちコメントに星あつまるんだなぁ』に「まあ、もっともではあるな」と思ったので、私の考える根拠を記す事にした。
私がファミコンカセットの穴はオーディオテープカセットを模した物と思う理由
ファミコンのカセットにはオーディオテープカセットを寸法上参考にしたと思われる点が多くあるためである。
オーディオカセットテープと比較
オーディオカセットテープとファミコンカセットの比較をする。カセット本体どうしでの比較では寸法も見た目も大きく違う。
しかし、両カセットの背面にあるカセットの穴についてはカセット端面から穴までの距離、穴の寸法が似通っていることが判る。
オーディオカセットテープのケースと比較
次に、ファミコンのカセットとオーディオカセットのケースを比較してみる。非常に近しい大きさに見えないだろうか。
実際に測定した値と、現在も標準サイズのオーディオカセットケースを販売しているWEBサイト*1を発見したのでその値も含めて比較する。
比較の結果ファミコンカセットとオーディオカセットケースの寸法max-minについては一番差がある高さ方向に於いても1mm未満の差しかない。
結論
ファミリーコンピュータのカセットの外形寸法はオーディオカセットとオーディオカセットケースの寸法を参照していると推測する。
任天堂はカードリッジでは無くカセットという名称を使用したことも含めデザイン上もオーディオカセットを模したと推測する。
ファミリーコンピュータのカセットの背面にある穴は、オーディオカセットの録音防止穴を模した物であると推測する。
附記 何故、オーディオカセットテープのケースと似せたのか
ここは推測というか経験の話ではある。ファミコンが流行していた当時、ファミコンのソフトを沢山持っている者はオーディオカセットのキャリングケースに入れて保管・持ち運びをしていた。大量のソフトをキャリングケースに入れてカセット貸し借りの場にやってくるA君は羨望の的であった。
話がちょいズレた。まあ、そう言うわけで当時からなんとなくファミコンのカセットとオーディオカセット(のケース)の類似性には気がついていたのである。
任天堂はファミリーコンピュータの周辺としてコレクションBOX(当時そんな名前だったかは記憶に無いが)等を売っていた。それらを販売する際に新規に型を起こすのでは無く、既存のオーディオカセット用を流用して安く、バリエーション多く作ろうとしたのでは無いだろうか。
以下余談
以下は今回のファミコンカセットとオーディオカセットの類似性を検討する際に気になった記事や説について述べる。
ゴゴ通信の記事は信用できるのか
ファミコンカセットの穴について「デザイン」で有ると報じたのはゴゴ通信というサイトである。
gogotsu.com実のところ、ゴゴ通信には申し訳ないが私はこのサイトが信用できる情報源とは思ってはいない。今回の記事もデザイナーや広報へのインタビュー等では無く単に問い合わせただけである。折角「デザインで有る」と回答を引き出したのにデザインの意図を掘っていないのが気になる。気になるというか勿体ない。
しかし、今までも雑誌に掲載された理由については「機能や意図はとしては不明である」と任天堂の回答を得ているところから『後付けで何かに利用した事はあっても、最初から何かの機能を意図した物では無く、デザイナーの裁量の範囲で付けられた』可能性が高い。
よって「実はあれはただのデザインなんです。」を積極的に疑う理由は無いと考える。
成形上の都合説について
成形上の都合例えば「材料の回りの為のゲート」や「スナップのフックを成形するためのスライド」や「型から抜くためのピン痕」を隠す為に穴をデザインに加えた説。
まず穴じゃ無くてもこれらのごまかし方法はあるので穴を開けるデザインにした理由にはならない。そして、穴の内縁にゲート痕も無さそうなのでむしろこの穴の角とか材料の回りが悪くなりそうである。
金型のスライドを動かすアームやピンの逃げと言う線もカセットの構造は単純なので無さそう、普通に内スライドで対処できるだろう。
カセットの穴周辺を見ると、むしろ穴があることで成型が難しくなってるように見える。
放熱口説について
位置的には上面に穴が開いているので冷却的には良さそうに見える。しかしこちらも、まず放熱口だとしてあの穴の形状にする理由は別に有るはず。つまりファミコン本体のようにスリット形状にしても良かったはずである。
そして初期のファミコンカセットにはROMしか載っておらず目立った発熱部品もない。後期になれば音源付きのバンクメモリコントローラとかでカセットの中はみっちり詰まって来るが、初期の頃について積極的に放熱口を開けて冷却する理由は無さそうだ。ファミコン本体の熱を吸い上げる線も無くはないが、カードエッジコネクタ側は塞がれているのでそれも無いだろう。
殻割り治具取り付け穴説について
製造上の不具合やメンテナンスの為にカセットの樹脂ケースを開封するための治具に固定するための穴との説だが。量産時については嵌合不良とか起こした場合でもケースの再利用はしないだろう、破壊的に基板を取り出すと考える。
問題はメンテナンス時であるが、バッテリーバックアップ対応カセットが発売されるまで基本的にはメンテナンスは必要なかったはず。
そして発売時からメンテナンスでの開封をあらかじめ考慮していたならば、穴の下に設置されている壁(恐らく異物が入るのを防ぐ為)を押してスナップのフックを解除する構造の方が素直に見える。
開発やバッテリーメンテナンスの殻割りに利用されたのは「偶々良いところに穴が開いていたので利用した」と考える方が素直だろう。
バックアップ電池のチェックのため説について
「レトロゲーム専門ニュースサイト」さんが唱えた説である。
famicoms.netファミコン登場当時にバッテリーバックアップのカセットは存在しなかった事、あらかじめ準備されていたにしてはプローブの差し込み方法がブラインド作業になっていて無理がある事から、「必要に迫られて偶々開いていた穴を利用した」ように見える。
それにid:sgo2氏のブックマークコメントに指摘されているとおり、ファミコンの発売が1983年で初のバッテリーバックアップ(BASICカードリッジ除く)の森田将棋が1987年である事を考えると、あらかじめ考慮されていたと考えるには1994年の出願では時期が合わない。
つまんない結論だな
まあ、世の中そんなもん。でも俺は面白かったぞ。
*1:コーシン電機株式会社 オーディオPケース(KF) ストッパー無 NB−10